『あるハウスメーカーで床鳴りのクレームが時々発生していて、その対応に多くの時間とコストをかけているらしい』
その話を聞いた時、これは役に立てることがあるに違いないと確信しました。
詳しく話を聞いて原因を調べていくと、床下地となる合板を釘留めしていたのですが、どうもその釘が抜けてきて床下地が緩んでしまい床鳴りの原因になっているようでした。
ビスの特徴は何と言っても釘の何倍もある高い引抜強度なので、正にうってつけということでビス留めを提案して建築現場でテストをしました。
ところが、ビスの特徴が裏目に出てしまいました。ビスを打ちこむ時に、職人さんがついつい深めに打ち込んでしまい、しっかりと合板を押さえ付けることができなかったのです。
「ビス頭の合板を押さえ付ける力」が「ビスの推進力」に負けてしまっていたのです。
ビス頭には「木材にめり込んで出っ張らない」ということが求められます。つまり一般的にビス頭は小さい方が良いとされます。ところがビス頭が小さいと押さえ付ける力も小さくなってしまいます。現場の要望を解決するには「頭が小さく、合板をしっかり押さえ付ける」が必要なのですが、この相反する課題を両立させることは困難でした
改めて現場からの要望を整理して、それを形にしてテストして、また意見を聞いて形にして、何度か繰り返してようやく「ツバ付き」というアイディアに到達しました。
このツバ付きは、ビス頭は従来通り小さく、めり込む直前でツバが合板をしっかり押さえ込むといった機能を持ったものになりました。ツバの大きさや厚み、ねじの他の部分とのマッチング調整を行って、ついに現場の方から合格をもらうことができました。この「ツバ付き」は以降のシネジック製品の大半に採用される画期的な開発となりました